思春期の女子高生達の友情を清々しく描いた青春映画。
「blue」(2001日)
ジャンル青春ドラマ
(あらすじ) 高校三年の桐島はクラスメイトでもそれほど目立たない遠藤のことが何故か気になった。意識し始めたのは二年生のある日。遠藤が救急車で運ばれていく姿を目撃してからである。その後、どういうわけか彼女は停学処分になり、最近になって学校に来るようになった。桐島は遠藤に一緒にお昼を食べようと誘う。こうして二人の交友が始まった。その後、桐島は遠藤の知られざる素顔に徐々に惹かれていくようになる。
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(レビュー) 女子高生の切ない友情を静謐なタッチで描いた青春映画。同名コミックの映画化である。
地味な作品であることは確かだが、思春期の少女達の等身大の姿にリアルに迫った所に好感を持てた。
演出はミニマムに設計されており、画面は安定したフレーミングと長回しによって整然と作られている。また、海や空の風景の美しさが素晴らしく、淡い青春の"匂い"というものをきちんと再現している。特に、桐島と遠藤が歩き回る終盤のシークエンスには陶酔的な美しさが感じられた。欲を言えば、一部でロケーションのちぐはぐさが目立つので、このあたりが無くなればもっと完成度は高くなっていただろう。
物語は、同性に対する憧れが恋心に変わり‥という百合属性なドラマになっている。謎めいた少女・遠藤には暗い過去がある。それを知った桐島はその悲しみを共有できず次第に思い悩んでいくようになる。その葛藤は見ているこちら側によく伝わってきた。
また、遠藤の秘密を探るミステリも面白く追いかけることが出来た。遠藤の親友・中野にべらべら喋らせてしまったのは演出的に難ありだったが、それまでの桐島の知りたい‥というモヤモヤ感はドラマの高い求心力を成している。このあたりの心理描写は繊細に表現されていると思った。
本作は基本的に桐島に視座が固定されているが、ここにもドラマ構成の妙がある。終盤の海辺のシークエンスで遠藤から見た桐島観が遠藤の口から吐露されているのだが、桐島はこの時初めて自分は遠藤にこんな風に見られていたんだ‥ということを知り驚かされる。二人は実に対照的なキャラクターで、簡単に言ってしまえば、遠藤は"持っている者”であり桐島は"持たざる者”である。"持たざる者″だった桐島が〝持っている″遠藤を常に見上げる関係だったのが、このシークエンスでは逆転する。実は遠藤の方が桐島に憧れていた‥ということが分かりしみじみとさせられるのだ。
桐島役は市川実日子、遠藤役は小西真奈美、それぞれに好演していると思った。
市川実日子は割と淡々とした演技を貫きながら、アンビバレントな少女の心情をナチュラルに見せている。ただ、これは演出的な問題かもしれないが、序盤の泣くシーンだけは不自然に写った。どうやらその後も彼女は時々感情が高ぶると泣く癖があるのでそういうキャラクターなのかもしれないが、ここだけ妙に過度に写ってしまったのが残念だった。
小西真奈美は市川以上に淡々としている。若干一本調子で食い足りない感じもしたが、桐島が憧れる対象としては、この凛とした佇まいは適確な演技に思えた。彼女には暗い過去があるが、それをわざとらしくちらつかせなかった点も良かった。
尚、製作に俳優の故・岡田真澄がクレジットされている。どういう繋がりで彼がプロデューサーになっているのか分からないが、彼が映画の製作に携わったのは本作と翌年のスポ根青春映画「AIKI」(2002日)だけである。意外に青春映画を作ることを切望していたのかもしれない。