別の世界に飛ばされた男の数奇な恋愛ドラマ。
「天使のくれた時間」(2000米)
ジャンルロマンス・ジャンルファンタジー・ジャンルコメディ
(あらすじ) 会社社長ジャックは仕事一筋の人間。クリスマスイブの日、13年前の恋人ケイトが連絡をくれる。しかし、彼は仕事を優先させてそれを無視した。その後、帰宅途中で雑貨屋で強盗犯に遭遇する。彼から1枚のクジを買って自宅へ戻り就寝した。翌朝、彼が目を覚ますとそこは別世界だった。ジャックはケイトと二人の子供に囲まれた平凡な父親になっていたのである。今までと全く異なる生活に戸惑いながら、彼は大切なものを見つけていく。
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(レビュー) 富と名声を得たエリートビジネスマンが、別の人生を歩みながら大切なものは何なのかを知っていくファンタジーロマンス作品。
F・キャプラの名作「素晴らしき哉!人生」(1946米)を思い出させるようなストーリーだが、こちらは男女の数奇なすれ違いをメインのドラマに敷くことで恋愛ドラマが強く打ち出されている。そこに「素晴らしき哉!人生」とは違った面白さが感じられた。
中盤でジャックが昔の結婚式のビデオを見るシーンが出てくるが、ここにはしみじみとさせられた。彼はそれまで元の世界に戻りたいと思っていたのだが、このビデオを見たことで気持ちが揺らいでしまう。高級車に乗れなくても、リッチなスーツを着れなくても、愛する妻子に囲まれながら平凡な暮らしを送るのも悪くないんじゃないか‥そう考え方を改めるのだ。ジャックの改心をセリフではなく映像で分からせた演出が良い。
全体を通してハートウォーミングな作りになっており、誰もが入り込みやすい作品と言えよう。大きな不満箇所も特にない。
ただ、逆に言うと良くも悪くも平均点な作品と言うことも出来るわけで、何かこちらの虚を突くようなインパクトが欲しかった。話の展開もこれと言った意外性がないので漫然と見れてしまう。良い話はそれだけで観客の満足を満たしてくれるものであるが、それだけではやはり物足りない。何か捻った展開を盛り込んでほしかった。例えば、せっかく登場させた天使を使って何か事件を起こすのも良い。そうした予想をさせない"何"かをもっと見せて欲しかった。
演出は概ね堅実にまとめられている。ただ、幾つか気になる箇所があった。ジャックが初めて異世界に飛ばされて目を覚ました時に、隣に寝ているケイトに気付かなかったのは回りくどい演出と言える。ここは自然に分からせるべきだったろう。終盤のプロポーズもやや強引に見えてしまった。もう少しジックリと描いた方が胸に迫ってくるような気がする。
D・エルフマンの音楽は劇中のクリスマス・シーズンに上手くマッチしていると思った。ただ、これも使い方をほどほどにしないと大仰過ぎて押し付けがましくなってしまう。個人的にはもう少し抑制して欲しかった。
ジャックを演じるのはN・ケイジ。シリアスもコメディも器用に演じ分ける俳優だが、今回は終始コメディ寄りな演技を貫いている。ケイトとの夜の生活のすれ違い、不慣れな育児パパ振りが実に可笑しかった。