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空気人形

予想外の結末で凹んだが周囲を描く群像劇は面白く見れた。
空気人形 [DVD]空気人形 [DVD]
(2010/03/26)
ぺ・ドゥナ、ARATA 他

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「空気人形」(2009日)星3
ジャンルファンタジー・ジャンル人間ドラマ・ジャンルロマンス
(あらすじ)
 中年男・秀雄は孤独を紛らすために毎晩ラブドールと寝ている。ところが、ある日そのラブドールが心を持ってしまった。秀雄の出勤中に彼女は部屋を出て外の世界を見聞する。そして、近所のレンタルビデオ店でアルバイトを始めた。彼女はそこで働く青年・純一に惹かれていくようになる。
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(レビュー)
 心を持ってしまった空気人形の恋をリリシズム溢れるタッチで描いたファンタジー・ロマンス。「自虐の詩」(2007日)の業田良家の同名コミック(短編)を実写映画化した作品である。

 魂を持った空気人形がメイド服を着て外出する姿など、明らかにその手のヲタク嗜好への媚びへつらいが見られ、最初はいわゆる"落ちもの″系と呼ばれるような男主人公に都合の良い物語だと思って見始めた。
 ところが、物語の中心に存在するのは孤独な中年男・秀雄ではなく空気人形の方で、自我を持ったことで生まれる葛藤、そこに集中してドラマは展開されていく。彼女は性処理の道具にされるだけの愛のない生活に苦悩し、アルバイト先で出会った青年・純一に淡い恋心を芽生えさせていくようになる。

 話だけ聞くといかにも陳腐な悲恋ドラマといった感じがするが、実際に映画を見てみるとそれほど感傷的な作りにはなっていない。これは監督・脚本を担当した是枝裕和の資質がそうさせているのだと思う。彼のこれまでの作品を見れば分かるが、基本的にはドキュメンタリータッチを信条とする演出家である。その作家性が良い意味で、本作の嘘臭いファンタジー色を払拭している。設定が設定なので他の作品に比べるとリアリティーには欠けるが、必要以上に盛り上げようとせず、淡々とした筆致で丁寧に描写するスタイルはいかにも是枝節である。そのおかげで変に浮き足立つようなドラマにはなっていない。

 ただ一つ、空気人形と純一の辿る結末については全くリアリティが感じられず興が削がれてしまった。
 この時の二人の行動が異常過ぎて入り込めなかった。そもそも、空気人形は詩を朗読するくらいだから、それを理解する知識や感動する心といったものは持っていたはずである。当然、自分は普通の人間とは違う存在であることも知っているものと思っていた。仮にそうでないとしても、その直前で純一と裸体を重ね合わせた時に、人間には体温があり人形である自分には体温が無いということくらいは気付くだろう。それなのに、何故彼女はああいう行動に出てしまったのだろうか?実に解せない。また、その行動に対する純一のリアクションも理屈に合わない。あるいは、ある程度覚悟していたという考え方も出来るが、だとしてもあのリアクションではその覚悟も感じられない。演出が中途半端過ぎる。このクライマックスシーンだけは、一歩引いて見ることしかできず余り乗れなかった。

 一方で、本作は空気人形と周囲の人間関係を描く群像劇にもなっている。都会に住む人々の孤独を彩豊かに照射した是枝監督の手腕は見事である。孤独というテーマ自体、彼の得意とするところであり、これについては見応えが感じられた。
 登場する人は多種多様である。生身の女性と付き合えない空気人形のご主人様・秀雄を筆頭に、二人暮らしの父子、身寄りのない老人、未婚の中年受付嬢、過食症の引き籠り女、サブカルヲタク青年、妻子に逃げられた中年男、退屈な日常の繰り返しに脱力している巡査等、実に多彩である。そして、彼らもまた空気人形と同じように心満たされぬ寂しい人たちである。

 尚、吉野弘作の「生命は」という詩をバックに彼らの生活をカットバックで繋いでいくシーンは、詩の意味を噛みしめながら見ると実にしみじみとさせられる。生命の欠如を他者との関係で埋めていくことの素晴らしさ、人間関係の尊さを歌っているのだが、現実の彼らはその欠如を埋めるだけの交友を持っていない。実に切なくさせられた。風に回る風車の音がやけに虚しく聞こえた。

 キャストでは空気人形を演じたペ・ドゥナの演技に見応えを感じた。たどたどしい日本語をしゃべりながら、たゆたうような演技を貫き、自我の萌芽を瑞々しく表現している。ヌードやセックスシーンにも果敢に挑んでおり頑張っていると思う。
 秀雄を演じた板尾創路も情けない役を飄々と演じていて良かったと思う。たった100円で喜ぶせこさ、股間に白毛を見つけて落ち込む姿など、自前のお笑いキャラを上手く利用しながら妙演している。
 一方、終盤に登場するオダギリジョーには興が削がれた。この役所にこのイケメンをキャスティングしてしまっては現実味が薄い。
[ 2012/05/27 01:50 ] ジャンルファンタジー | TB(0) | CM(0)

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