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ファミリー・ツリー

泣きポイントは幾つかあったが、作品としての色気が物足りない。
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「ファミリー・ツリー」(2011米)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 オアフ島で弁護士をしているマットはカメハメハ大王の末裔で、このたび先祖から受け継いだ広大な土地を売却しようと計画していた。そんなある日、妻がモーターボートの事故で昏睡状態に陥ってしまう。医者からは回復の見込みがないと宣告される。これまで仕事一筋に生きてきたマットは、二人の娘達の面倒を見ながら今後の身の振り方を考えなければならなくなった。そんな時に、長女の口から妻に関するとんでもない秘密が暴露される。
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(レビュー)
 妻を失った中年男の悲喜こもごもをユーモアとペーソスで綴ったヒューマン・ドラマ。

 物語自体はよくあるものでこれと言って新味はないが、監督・脚本を担当したA・ペインの端正な語り口のおかげで最後まで面白く見ることが出来た。セリフや行動が自然体でさりげないところが実に良い。

 例えば、長女アレックスのボーイフレンド、シドの告白シーン。次女スコッティが母の死を受け入れるシーン。家族の確かな絆が実感されるラストショット。この3つは特に印象深かった。下手な演出家なら過剰にBGMをかけて泣かせよう、笑わせようとするところを、A・ペインは抑制を効かせた演出であざとさ、嫌らしさを払拭し、ナチュラルなシーンに仕立てている。
 ちなみに、彼はこれまでに「アバウト・シュミット」(2002米)、「サイドウェイ」(2004米)を撮り、評論家たちから高い評価を得てきた。今作も各方面から多大な称賛を浴びたという。彼の実力が本物であることはすでにこの実績が証明している。確かに類まれなセンスの持ち主と感心させられる。

 また、ハワイと言えば青い海と輝く太陽というイメージを持つが、意外にも今作には曇天の風景が多い。多くの人で賑わうビーチも出てこない。これも計算された物だと思う。つまり、マット達の置かれている状況、愛する妻、母を失った心象になぞらえているからに違いない。そして、太陽がさんさんと降り注ぐ明るい景観は、ドラマのカタルシスを生むためにクライマックスから終盤にわざわざ取ってあるのだ。ここまで計算しているA・ペインは正に恐るべし演出家と言える。

 ただし、彼の手腕は見事と言えるが、先述のように今回は主人公の設定やストーリー展開が、過去作に比べると若干通俗的過ぎるきらいがある。ドラマの転換としてマットの妻の秘密が登場してくるが、これも阪本順司監督作「魂萌え!」(2006日)でも描かれていたように、よくある話と言えばよくある話だ。完成度の高い作品であることは否定しないが、全体を通して漫然と見れてしまう作品であり、そこが今作の唯一の弱点と言えるだろう。今一つインパクトには欠ける。

 マットを演じるのはG・クルーニー。従来はプレイボーイというイメージが強かったが、今回は妻に愛想を尽かされた仕事人間、娘たちに馬鹿にされる情けない父親という3枚目を演じている。彼は昨今こうした中年男の悲哀が良い感じで熟成されてきている。尚、妻との別れのシーンには、しみじみとさせられた。彼のキャリアで一番の演技と言っていいだろう。
[ 2012/06/06 02:14 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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