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沈まぬ太陽

この大作感は邦画界では久しい。
沈まぬ太陽 スタンダード・エディション(2枚組) [DVD]沈まぬ太陽 スタンダード・エディション(2枚組) [DVD]
(2010/05/28)
渡辺 謙、三浦友和 他

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「沈まぬ太陽」(2009日)星3
ジャンル人間ドラマ・ジャンル社会派
(あらすじ)
 1960年代、国民航空の労働組合委員長を務める恩地は、副委員長・行天と労働環境改善を巡って争議に明け暮れていた。志を同じくする者同士、固い絆で結ばれていたが、二人の運命は大きな隔たりを見せていくようになる。恩地はパキスタンに左遷され、行天はアメリカに栄転となったのだ。家族と共に慣れない外国で不遇の暮らしを強いられる恩地。そんな彼を更なる試練が襲う。そして時はめぐり現代。国民航空は航空史上最悪のジャンボ機墜落事故を起こしてしまう。帰国した恩地は遺族者たちの世話人係を任されるのだが‥。
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(レビュー)
 日航機123便の墜落事故をモチーフにした山崎豊子のベストセラー小説を豪華キャストで映像化した作品。

 最近の日本映画では見られなくなったオールスター・キャストによる大作で、上映時間はインターミッションを挟んで3時間半弱。正に堂々たる大作と言えよう。
 ちなみに、原作山崎豊子と言えば、山本薩夫監督とのコンビで作られた「白い巨塔」(1968日)、「華麗なる一族」(1974日)「不毛地帯」(1976日)といった作品が思い出される。いずれも見応えのある力作であった。本作にもそうした山崎&山本テイストは確実に引き継がれており、こじんまりとした印象の多い日本映画界にかつての大作趣向を蘇らせた‥という点では意義のある作品のように思う。

 ただ、原作はかなりの長編であり、それを1本の映画にまとめるのはさすがに無理がありすぎる‥という感じがした。
 映画は恩地の正義の戦いをストレートに綴っている。その戦いは、大きく分けると労働闘争、墜落事故の処理、会社の改革という3つのエピソードにまたがって展開されていく。その間に盟友から宿敵となった行天、事故の遺族者たち、政治家、恩地の家族等、多彩な人物が登場してくる。これだけの事件と人物が登場してくれば、さすがに3時間半かけても作りは窮屈にならざるを得ない。よくまとめている方だと思うが、友情、家族愛、政治サスペンスといった様々なテーマを完全に咀嚼できないまま、あらすじの説明だけに終始してしまった。

 個人的には、恩地と行天の対立関係が最も面白く見れた部分だったので、友情の崩壊。そこをもっと掘り下げてほしかった。
 情に流されなかった結末は評価できるものの、恩地=善、行天=悪という振り分けを安易に処理してしまった所に詰めの甘さが感じられた。何物にも屈しない恩地の正義の信念は十分描かれているのだが、逆に行天がどんな思いで善から悪に染まってしまったのか?そこを深く掘り下げて欲しかった。そうなれば当然映画の上映時間は更に長くなってしまうが、他のエピソードを削ってでもそこを見せて欲しかった。
 例えば、「ダークナイト」(2008米)は徹底してジョーカーの悪を描くことで、バットマンの善の重みを問うことに成功した作品だと思う。本作も行天の心中に迫れれば、恩地の善の尊さ、意義は更に大きな意味を持つに至っただろう。この手の大作でしか味わえない心にズシリとくる重厚感も出たかもしれない。

 演出は概ね堅実にまとめられていると思った。ただし、一部のCGについてはいただけない。特に、像のCGは余りにも違和感がありすぎて、正直見ていて辛かった。このアバンタイトルのカットバック演出は不要に思う。また、人前で遺言を口に出して読む演出はいくらなんでも無粋であろう。黙読、せめてモノローグならまだ自然に見れる。

 キャストは流石に芸達者が揃っているので安心して見ることが出来た。特に、印象に残ったのは木村多江が遺体安置所で泣き崩れるシーンである。夫の死を信じたくないという悲痛な思いを文字通り〝壊れた″演技で上手く表現していると思った。むろん、恩地を演じた渡辺謙の熱演も見応えがあった。

 海外ロケもこの手の大作感を出す上では奏功している。アフリカ・ロケは映像的にもスケール感があって良かった。

 ちなみに、今作でも最も印象に残ったキャラクターは恩地でも行天でもなく、香川照之演じる八木だったりする。彼は恩地の元で労働運動に励む真面目で気弱な社員なのだが、会社が労組を潰しにかかる中で職場の窓際へ追いやられてしまう。それでも彼は辞めずに会社にしがみついた。彼には彼なりの戦いがあったのだ。強い信念を持って会社の中から改革を起こそうとした恩地は立派なヒーローだった。しかし、八木はまた違った意味で目立たぬヒーローだったように思う。結局浮かばれない形でドラマから退場してしまうが、この顛末にはサラリーマンの悲哀を見ずにいられなかった。
[ 2012/06/10 01:30 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(1)

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[ 2012/06/10 06:51 ] [ 編集 ]

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