モラルに唾を吐き捨てる男をA・ウォンが怪演!
「エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルス」(1996香港)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) マフィアのカイはボスの女房を寝取ったことで殺されそうになり、逆にボス達を殺してアフリカへ逃亡した。それから十数年後、殺されたボスの娘リリーが新婚旅行でアフリカを訪れる。そこで食堂の給仕をしているカイに再会した。しかし、リリーは親の仇とは気付かなかった。ある日、カイは豚肉を仕入れにサバンナの奥地の村を訪ねる。そこはエボラ出血熱が蔓延した死の村だった。カイは感染した女をレイプして体液を浴びてしまい‥。
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(レビュー) ウィルスに感染した男の凶行を極悪なバイオレンス描写で描いたサスペンス映画
エボラ出血熱については何となく恐ろしい病気であることは知っていたが、具体的にはどんな症状が起こるのか?何が原因でそうなるのか?詳しくは知らなかった。この映画を見るとそのあたりの所がよく分かる。映画だから多少の誇張はあるだろうが、一度感染したらほぼ助かる見込みがない実に恐ろしい伝染病である。
本作の主人公カイはこのエボラに感染するのだが、なんという奇跡か‥1000万人に一人という確率で特殊な免疫を持っていたために自然回復する。しかし、問題はここからで彼は自分が保菌者であることを知らずに周囲にウィルスをまき散らしていくのだ。更に始末に負えないことに、このカイという男、自分のボスの女房を寝取った上にボス共々殺害するわ、片っ端から女は犯すわ、倫理の欠片がこれっぽちもないダメなヤクザなのである。最初は知らずにウィルスをまき散らしていたが、自分が保菌者であることを知ると今度はわざとそれをばら撒こうとし始める。
映画は親の仇であるカイをリリーが追いかけるというサスペンス仕立てになっている。しかし、正直そんな話はどうでもよくなってきて、全編に渡ってカイの傍若無人振り、変態振りが描かれ、映画もそこを見せることに力を入れて作られている。
例えば、豚肉の切り身を使ってオナニーしたり、レイプした女を人肉バーガーにして売ったり等々。とにかくやることなすこと酷すぎる。カイが街中に唾とスペルマをまき散らす姿は見ようによってはブラックコメディのように映るが、それはあくまで洒落が通じる人だけである。おそらくモラルを重視する人が見たら笑うよりも怒りだすだろう。
尚、映像的にもかなりショッキングな物が飛び出してくる。見世物映画としては十分のエグさで、ここが今作の一つの見所でもある。チープな特撮もあるにはあるが、そこはそれ。低予算のB級映画だと思えば許せてしまう。
カイ役は香港映画界の人気俳優A・ウォン。よくこんな役を引き受けたなという驚きもあるが、この何でもありなバイタリティ溢れる役者魂には昔ながらの香港映画人気質を見てしまう。もはや俳優としてのイメージをかなぐり捨てた怪演は一見の価値あり。