fc2ブログ










冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

J・トー美学ここに極まれり!
冷たい雨に撃て、約束の銃弾を [DVD]冷たい雨に撃て、約束の銃弾を [DVD]
(2010/12/03)
ジョニー・アリディ、アンソニー・ウォン 他

商品詳細を見る

「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」(2009仏香港)star4.gif
ジャンルアクション
(あらすじ)
 娘一家を惨殺されたフランス人の中年男コステロは、敵を討つためマカオにやって来た。その夜、彼が宿泊するホテルで殺人事件が起こる。コステロは偶然殺し屋達の顔を見てしまう。しかし、彼は警察に訴え出なかった。逆に彼らを雇って娘一家の仇を取ろうと考える。
楽天レンタルで「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」を借りよう
goo映画
映画生活

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ


(レビュー)
 家族を殺された中年男と殺し屋たちの復讐劇をクールなタッチで描いたアクション映画。

 監督のJ・トーの最高傑作は未だに俺の中では「ザ・ミッション/非情の掟」(1999香港)なのだが、それは最初に見たインパクトということもあるかもしれない。どうしてもそれを超えられない‥というのが俺のJ・トー作品観である。ただ、昨今の活躍は目覚ましいものがあり、独特の映像美学、ユーモア・センスはこの前の記事で紹介した「エグザイル/絆」(2006香港)で一つの頂点に極まったと思っている。
 その後、ラブロマンス作品や複数の監督たちとの合作などを撮りつつ今作を完成させた。脂がのり切ったJ・トー節が随所に炸裂しており、尚且つドラマも男の友情に重点を置いた作りで中々渋い。俺の中では「ザ・ミッション/非情の掟」にようやく肩を並べるくらいの傑作が誕生した‥という感じがした。

 ドラマはかなりウェットに仕上げられている。家族を殺された中年男コステロが殺し屋を雇って復讐するというシンプルな話の中に熱い友情が描かれ、最後は男泣き必至な抒情が施されている。また、殺し屋たちの非情な世界もキッチリ描き込まれていて決して甘ったるいファンタジーになっていないところも良い。

 確かに、殺し屋たちが素性も知らない男から簡単に依頼を受けるだろうか?とか、コステロの記憶障害の設定に説得力が今一つ感じられないとか、肝となる部分の作りはまだまだ甘い。そこを気にしてしまうと素直に入り込むには難しいドラマであろう。しかし、それを凌駕してしまうJ・トーの演出。これには唸らされてしまう。シナリオの綻びを彼の演出で補っているような作品である。特に、彼が作り出す緊張感漂う空気感、痺れるような雰囲気作りが抜群である。

 たとえば、「エグザイル/絆」でも際立っていた"語らない″演出は今回も健在だ。冒頭から会話のほとんどが一言、二言で済まされ、全てを語らなくても目と目で意思疎通出来るという〝雰囲気″〝空気感″が画面の中に形成されている。これによって、顔を見られたクワイ達がコステロを見逃すのも、コステロの依頼を即決することも、敵の殺し屋と対峙し続けることも、無言の意志疎通がそこで行われているから‥という妙な説得力が備わる。悪く言えばごまかしのテクニックなわけだが、"映像″で語る映画独特の表現法を熟知しているJ・トーだからこそ出来るテクニックだろう。これはもはや円熟の域に達したと言ってもいい。

 〝語らない″演出は、アクションシーンを盛り上げる上でも、身震いするような緊張感を生み出している。序盤のクワイ達の殺しのシーン、月が隠れて辺り一面が暗闇に覆われる森のシーン、このあたりにはぞくぞくするような興奮が味わえた。

 後半は一転して泣きの演出で畳み掛けてくる。これも必要以上に"語らない"演出が奏功している。そのおかげで余り嫌らしさを感じない。クライマックスからエンディングにかけての男泣き必至なホモ・ソーシャル美学も然り。いかにも「ザ・ミッション/非情の掟」から一貫するJ・トー美学が際立っている。

 一方、いくらリアリティを重視しているとはいえ、今回もやはり幾つか荒唐無稽な演出が見られる。
 例えば、クワイ達のクライマックスのアレには流石に失笑してしまった。分かり切っていることとはいえ、余りにも独創的過ぎて全体のリアリティを壊しかねないほどの荒唐無稽な演出である。大事なシーンだけにもう少しシリアスに演出して欲しかった。
 同様に、その後のコステロの幻視も現実離れしすぎていて、シリアスなドラマをいたずらに軽く見せてしまっている。

 ただ、幾つかこうした不満はあるものの、良い面、悪い面含めてブレない男J・トーの作家性は存分に出た作品のように思う。彼の資質を測る意味でもうってつけの作品になっている。出世作「ザ・ミッション/非情の掟」共々、彼の代表作になりそうな作品であることは間違いない。
[ 2012/09/02 00:56 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/997-a1b61bbf