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おおかみこどもの雨と雪

母子の絆を感動的に描いた細田守の最新作は地味だが味わい深い。
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「おおかみこどもの雨と雪」(2011日)star4.gif
ジャンルアニメ・ジャンルファンタジー・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 大学生の花は都内のアパートで一人暮らしをしている孤独な少女である。彼女は構内で度々見かける素性の知らない男のことが気になった。男は大学の生徒ではなく、引越しの仕事をしながら勉学に励む真面目な青年だった。こうして二人は付き合い始める。それから暫くして、男は自分がおおかみおとこであることを告白する。しかし、それでも花の彼に対する愛は変わらなかった。やがて二人は結ばれ、おおかみおとこの血を受け継いだ2児が生まれる。姉の雪はやんちゃに育ち、弟の雨は優しく育った。そんなある日、おおかみおとこが不慮の死を遂げる。花はたった一人で二人の子供を育てることになるのだが‥。
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(レビュー)
 おおかみこどもの子育て奮闘記を感動的に綴ったアニメーション作品。

 監督・脚本は細田守。共同脚本に奥寺佐渡子。今回は「時をかける少女」(2006日)、「サマーウォズ」(2009日)とガラリとテイストを変えた人情お伽話になっている。子育ての難しさの中にアニメならではのファンタジー要素を施した野心作で、このテーマにこういう形で切り込んだ作品はおそらく日本アニメ史上稀有ではないだろうか。

 前2作に比べると明らかに地味な作品であることは否めない。目を覚ますようなアクションやビジュアルフックを持っているわけではない。また、キャラクターデザインもこれまでに続き貞本義行が担当しているが、萌え要素もなければむしろ違和感を覚えるくらいに造形が地味すぎる。
 しかし、こうした地味さは作品の本質を語る上では大して意味がない事だと思う。今回は最初からドラマに重点を置いた作りを目指しているからだ。

 キャラの説明、および花とおおかみおとこの馴れ初めは序盤で早々に切り上げられる。このドラマは娘の雪が花から聞いた話として回想形式で進行する作りになっている。伝聞形式がお伽話のように見せる構造になっていて、雪の記憶が無い序盤がダイジェスト風な作りになっているのはそのためだ。いずれにせよ、序盤はキャラクターのバックストーリーが薄み、あるいは表層をなぞるような作りになってしまった感は否めない。

 ただ、物語の本文は雪と雨が生まれて以降の子育てのドラマで、ここから映画は腰を据えてジックリと語られていく。女手一つで人間でもない狼でもない〝おおかみこども″を育てることの苦労が様々なエピソードによって紹介されている。
 そこから見えてくるテーマは母性愛である。花のおおかみこどもにたいする無限の愛が様々な場面から感じられた。何かと親子関係が希薄になりつつある現代、この究極の母性愛は尊ばれるべきではないだろうか。作品の存在意義も大きいものと思われる。確かに少々出来すぎなお母さんかもしれないが、最初からお伽話であることは分かり切っていることなのだから、ある程度は"理想像″として見てあげるべきではないかと思う。

 一方で、今作は雨と雪、それぞれの自律のドラマにもなっている。人間として生きるのか、オオカミとして生きるのか、その葛藤がじっくりと掘り下げられており、その答えは映画の結末で出されている。

 雪についてはクラスメイト草太との淡いロマンスを絡めながら、普遍的な思春期への成長ドラマが瑞々しく語られている。そのクライマックスとも言える告白シーンは、見ているこちらがこっぱずかしくなる程だったが、青春の匂いがきちんと織り込まれていて感動的だった。困難が極まる道を敢えて選択した所に彼女の勇気も感じられた。

 雨に関しては子供の成長を見送る母親視点から、子の巣立ちというこれまた普遍的なドラマが真摯に訴えられている。ただ、こちらに関しては若干弱く映ってしまった。映画の語りが雪の回想だからということもあるが、どちらかというと客観的視点に終始する。見応えとしては雪の方に軍配が上がる。

 細田監督の演出は実に手堅く、必要以上に"語らない″演出も冴えわたっていた。特に、今回演出上の特徴として固定ロングショットが挙げられる。日常の芝居が続くので短くカットで割る必要が無いというのもあるが、それでも異常なほどキャラクターをフルボディで捉えたカットが多い。静的な場面が多い分、大画面で見てしまうと細かな粗が目立ってしまうが、シーンの臨場感、あるいはここぞという所のアクションを活かすためのメリハリとして考えればこれは実に見事と言えよう。

 例えば、セリフを排して描かれるおおかみおとこの死のシーン。普通なら花の悲しみの表情をアップで捉えることで観客の感情にダイレクトに揺さぶりをかけたがるところを、細田監督は敢えてロングショットで延々と表現する。それによって花の喪失感と絶望感が強調され、この場面の悲劇性がより一層浮かび上がってくる。
 また、中盤の雪原の中を花達が疾走するシーン。窮屈な都会を脱け出して大自然で戯れる歓びが、アニメならではの躍動的な動きによって表現されており素晴らしいの一言だ。静的な日常芝居とのギャップがいっそうこのシーンの感動を大きなものにしている。
 また、序盤の花とおかみおとこの微妙な距離の取り方にも感心させられた。大して会話が無いのに互いの心が親密に絡み合っていく様子は見ていて何とも心地がよい。近すぎず遠すぎず、この絶妙な距離感が凄く自然体で、とりわけ図書室での二人の間に流れる温もりに満ちた空気感が好きである。

 このように本作はセリフに余り頼らない演出が貫かれている。そこに味わいを感じるのか、退屈感を感じるのかは見た人それぞれであろう。個人的には、一歩引いた目線で語るこの演出は大いに評価したい。

 一方、細田監督が目指した今回の演出方法によって、若干説明不足を感じる箇所もある。
 おおかみおとこのルーツや死の真相、雨と先生の出会い、終盤の草太の居眠りの理由等々、腑に落ちない、あるいはご都合主義と思えるような突っ込み所がある。このあたりは観客が想像する余地として敢えて残しているのかもしれないが、だとしたら作り手の怠慢としか言いようがない。きっちりと納得できるような説明が欲しい。

 キャストは概ね安心して聞けた。今回も一部で声優ではないキャスティングになっているが、宮崎あおい、麻生久美子、菅原文太あたりは経験者であるので慣れている。既存の声優にはないナチュラルな演技が今作のテイストには上手くマッチしていると思った。
[ 2012/09/05 14:56 ] ジャンルアニメ | TB(0) | CM(0)

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