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マイマイ新子と千年の魔法

地味ながら心に染みる良作。
マイマイ新子と千年の魔法 [DVD]マイマイ新子と千年の魔法 [DVD]
(2010/07/23)
福田麻由子、水沢奈子 他

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「マイマイ新子と千年の魔法」(2009日)star4.gif
ジャンルアニメ・ジャンル青春ドラマ・ジャンルファンタジー
(あらすじ)
 昭和30年代、山口県防府の山々に囲まれた小さな町におでこにマイマイ(つむじ)がある小学生新子が住んでいた。彼女は祖父から千年前の昔話を聞かされて育ったため、今でもその時代のことを空想するのが大好きだった。ある日、学校に貴伊子という転校生がやって来る。都会育ちのお嬢様で周囲に中々馴染めずにいたが、ひょんなことから新子と仲良くなり一緒に遊ぶようになる。そして、同級生のシゲルやタツヨシたちとも仲良くなり川にダム池を作って皆の秘密基地にした。
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(レビュー)
 昭和の田園風景の中に、少年少女たちの心の成長と交友を描いた秀作アニメ。芥川賞作家・高橋のぶ子の自伝的小説を作画に定評があるマッドハウスが製作した作品である。

 外見が地味なためかひっそりと単館上映されるにとどまったが、その後口コミで評判が広まり各地で再上映され、結果的に1年以上にも及ぶロングランとなった作品である。これは日本アニメ映画史上稀有な例だろう。それだけ多くの人々に支えられた、力を持った作品だと言うことが出来る。

 映画前半は、新子と貴伊子の友情を朴訥としたトーンで綴る児童映画のような作りになっている。ウィスキーボンボンで酔っぱらったり、小さなダム池を作ったり、かつてあった周防国に思いをはせたりetc. アニメーションならではのデフォルメされた子供たちの演技が何とも微笑ましく、とりとめない日常描写の数々に何だか心が洗われる思いがした。昭和テイスト溢れる空気感にもノスタルジーを覚える。

 その一方で、子供たちを取り巻く環境は必ずしも楽しいことばかりではなく、時には過酷な事件も起こる。映画はそこの部分にも目を逸らさず、現実の何たるかを新子たちに提示して見せる。

 たとえば、タツヨシと父親の間に起こる悲劇は、映画後半を使ってじっくりと描かれるエピソードである。この父子は普段からどんな生活を送っていたのであろうか?物語は新子の視座に固定されているため詳細は分からないが、少なくともあれだけ多くの人達から厚い信頼を受けていたタツヨシの父親がああいう顛末に陥ってしまったということは、家庭内では決して良き父親ではなかったということであろう。タツヨシがいつも持っていた木刀。そこに彼なりの父に対する複雑な愛憎が読み取れて何だかやりきれない思いにさせられる。

 あるいは、新子と貴伊子が慕う女性教師ひずるの複雑な恋慕も実に切ない悲恋ドラマだ。おそらく幼い新子たちからすれば到底理解できないものだったろう。ただ、これは避けようがない現実であった。

 後半からこうした過酷な周縁のドラマが登場することによって、今作は単に郷愁に溺れるだけの感傷的な作品ではなく、大人が見ても十分に噛みしめることが出来る骨を持った作品へと底上げされていく。

 今作にはファンタジーの要素もある。新子は千年前のお姫様の物語を度々空想するのだが、それが新子たちの現実のドラマと並行して描かれる。画面に華やかさを添え、大変魅力的だった。
 このお姫様は新子たちと同じ年頃の少女で、監視の目が行き届いた窮屈な暮らしを余儀なくされている。それがひょんなことから町娘と出会うことで少しずつ心が解放されていくようになる。そのドラマは、丁度、新子と貴伊子の交流ドラマに呼応するように構成されており、現在と過去、現実と空想という相反する二つが華麗に展開されていく。この対比も見事である。
 そして、この二つの友情ドラマは最後に全く別々の結末を迎える。これも味わい深かった。人の出会いと別れの数奇、連綿と続く人と人の輪。それが感じられる。実にしみじみとさせられた。

 ただし、このファンタジー・パートには若干視座の曖昧さが感じられた。基本的には新子が見ているのだが、後半からは彼女の影響で貴伊子も見るようになっていく。一体どちらの空想なのか、途中から曖昧になっていく所に演出の不備を感じた。このあたりがもっと端正に組み立てられていれば、更に完成度が増したであろう。
[ 2012/09/07 03:31 ] ジャンル青春ドラマ | TB(0) | CM(0)

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